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ビジネスゲームは、ビジネスを直接的・間接的に疑似体験できるゲームを指します。
ビジネスゲームの用途は様々ですが、それを用いた研修は、ビジネスゲーム研修やゲーム研修と呼ばれます。当社では意味的に広い「ゲーム研修」という言葉を好んで用います。ビジネスを疑似体験するビジネスゲーム研修では、事前の知識付与・ゲームの活動・リフレクションの一連の活動を通じて、意図した学習効果を実現します。
ビジネスゲームという言葉は、企業研修や社員研修では一般的に使われていますが、明確に定義されていません。
私たちは、ビジネスゲームを、テーマと用途でわけて考えています。テーマがビジネスのものとそうでないもの、用途がビジネスとそうでないものでマトリクスを作って考えています。
テーマがビジネスのものとは、会社経営や会社の日常場面を扱ったものです。例えば、ビジネスシミュレーションなどは会社経営を疑似体験するものですから、テーマがビジネスです。また、会社で起こりがちな「あるある」を扱っているものは会社の日常場面を扱っていますから、テーマがビジネスになります。
用途がビジネスのものとは、簡単にいえば商用のことです。例えば、企業研修で使うとか、採用活動で使いますとかは用途がビジネスになります。この掛けあわせで考えてみましょう。
例えば、携帯用ゲームで発売されていた「起業道」や「ザ・コンビニ」などはビジネスがテーマですが、用途は遊戯ですので、非ビジネスとなります。
ボードゲームなどで、テーマはビジネスではないけれどもゲームの活動がビジネス的なので研修で使われるといったものもあります。少し前に、ボードゲーム「フレスコ」を研修に用いている会社がありました。
当社のラインナップの中では、昔話を扱った「解決昔話」がこれにあたります。既存のボードゲームの研修利用などもここに入りますし、謎解きゲームを研修で使うといったものや、砂漠や月面やバスや野球などを使った有名なゲーム群もここにカテゴライズされます。この2つが「広義のビジネスゲーム」です。
テーマがビジネスで、用途がビジネスのものは「狭義のビジネスゲーム」です。多くの方がイメージするのがこの「狭義のビジネスゲーム」ではないでしょうか。当社のゲームは大半がここに当てはまります。
これは、議論するまでもなく、単なる遊びのゲームとなります。
この分類については、以前東京工芸大学のシリアスゲーム論という授業でゲスト講演させていただいた際にお話ししました。最近、私たちが「ゲーム研修」という言葉を好んで使うのは、広義のビジネスゲームをビジネスゲームと認識してもらえないことがあるためです。 なお、ビジネスをゲームと捉えて、ビジネスゲームということもありますが、ここではそれは除外します。
さて、続けて、ビジネスゲーム「研修」について説明します。ビジネスでは様々な目的のためにゲームが使われます。採用活動で使われることも、組織開発的な文脈やワークショップで使われることもあります。
ビジネスゲーム「研修」は、特に「ビジネスゲームを学習目標のある研修で用いること」を指します。
なぜこのようにあえて「学習目標のある」をつけて限定するかというと、研修と名前がついていても、学習目標がないものがあるからです。これを理解するためには、ゲームの性質を知る必要があります。
ジェインマクゴニガルによれば、ゲームにはゴール・ルール・フィードバックシステム・自発的な参加がある
といわれます。
研修だと自発的ではないこともあるかもしれませんが、ゴールとルールとフィードバックシステムは必ず存在しています。 ゲームでは、何かを目指して一定の規則にのっとってプレイし、行った活動に対して何らかのフィードバックがあります。 例えば、クリアを目指して、コントローラーに割り当てられたボタンを使ってプレイするとその操作のよしあしによって勝ったり負けたりするというフィードバックがあるわけです。 これが非常に楽しく、ゲームは没入しやすく反復が辛くない(=ハマる、フローに入る、ゾーンに入る)ため活動を何度も繰り返しやすくなります。
この活動に振り返りや内省・省察・反省などを行うことで学びにつなげていくのがビジネスゲーム研修です。
研修の多くは会社が用意しますので、自発的な参加は半分以下でしょう。会社が決めたゴールがあり、それにあったゲームが選定されています。 一方、ゲームは何をやっても同じ効果が得られるわけではありません。格闘・シューティング・パズル・・・様々なゲームがあるからです。 研修で使われるゲームでも同じです。学習させたい目標を達成できる「仕組み」を持つゲームが採用されます。
学習には「意図的学習」というものがあり、3つに分けられます。
まずは「直接学習」です。これは意図通りの学びをさします。 「間接学習」もあり、これは他者を観察・模倣して得られる学びです。 講師と参加者間の学びが直接学習とするなら、参加者間でのインタラクションを通じた学びを「間接学習」と呼びます。
もうひとつが「付随的学習」です。 これは、意図的学習を行っていたら、ついでに別なことを学んだというものです。 意図的学習と並列に並べられるものに「偶発的学習」があります。これは、学習を意図しない活動で、知識が偶発的に身に付くといったものです。
学習意図を持っていないものは単なるレクリエーションです。研修という冠がついていてもそれは「研修もどき」の「こじつけ研修」です。
*こじつけ研修については以下の記事をご参照ください。 御社の後継者に忍び寄る”こじつけ研修”とは!?
当社では、ビジネスゲームを以下の3つに分けています。
経営体験を通じて意思決定・計数管理の学習を行うものです。著名なものだと、マネジメントゲームなどがあります。ソフトバンクでこれを使った研修が行われていることが有名ですが、彼らはゲームで遊んでいるわけではなく、ゲームを通じて意思決定を学んでいます。特に、その「高速回転効果」は非常に高く、下手な事業で失敗経験をするよりも高い効果があります。
最短で後継者を育成するたったひとつの方法
当社では、経営シミュレーションについて以下のような記事を書いています。
有名企業の後継者候補はなぜゲームで倒産を繰り返すのか
ビジネスパーソンの99.9%が正解できない意思決定ゲーム
反復訓練を通じた行動の定着ができることもゲームの強みのひとつです。 良いゲームには、熱中できるという要素があるため、ハマる、フロー状態になるのが容易です。 こうした環境下では、反復が苦にならず、何度も同じ行動を繰り返し、失敗してフィードバックを受けることができます。 特にコミュニケーションのような失敗が怖い分野で、短時間で何度も失敗経験ができることは大きな利点といえるでしょう。
これまでと異なる重要な視点の獲得も、ゲームの大きな特徴です。重要性を認知することで初めて見えなかったものが見えるようになることがあるでしょう。 例えば、ものの見方が固定化してしまっていた人が別なものの見方をできるようになることは視点の獲得です。 問題と思っていなかったものが問題に見えるようになることも視点の獲得といえるでしょう。
ビジネスゲームは、ビジネスという社会的に有益な活動にゲームを用いることでもあります。 こうしたゲームの活用はビジネスに限らず、医療・軍事などでも盛んです。 こうした社会に役立つゲームのことを「シリアスゲーム」と呼びます。 以下、拙編著「入門 企業内ゲーム研修」より抜粋します。
1990年以前には、「ゲーミング&シミュレーション」という分野と、「エンターテインメントエデュケーション」という分野に大きく2つに分けられます。ゲーミング&シミュレーションは、必ずしもゲームの娯楽性とか楽しさの要素を重視せず、状況をシミュレートした中で活動することや、構造をシステムとして表現することを重視しています。一方、エンターテイメントエデュケーションは、テレビやマンガも含めて、娯楽の中にためになる要素をいかに入れるかという形で発達しました。 コンピュータゲームの分野においては、90年代にエデュテイメントという言葉で普及しました。 その中で学習ゲームは非常に普及をしましたが、研修や学校の授業の場よりも、余暇などの自由時間にプレイして、自然とためになる知識が身に着くという自習的な考え方が色濃い分野です。
2000年代に入った頃、デジタルゲームの技術が高度になり、安価で普及してきたことや、様々な分野でバラバラに分散してゲームの教育利用の取り組みが行われてきた中で、ゲームの社会的利用を一括りにして普及させたいという機運が高まり、アメリカの研究者たちを中心に「シリアスゲーム」という用語が広まりました。 シリアスゲームと聞くと、深刻なゲームという印象もありますが、軍事や医療、ビジネスなどのように扱う内容が「真面目な」ゲームという意味です。 学校教育、軍事や医療、ビジネスなど幅広い分野でゲームが利用される取り組みに対して、「あれはシリアスゲームだね」と共通認識を持ち易くなりました。
シミュレーションという用語は、一般用語になっていますので様々な意味で使われます。
シミュレーションと言ってもゲームの要素を重視している場合もあるし、ビジネスゲームと言っても実際にはシミュレーションということもあります。 シミュレーションの概念的な整理としては、現実世界のプロセスやメカニズム、様々な構造を模倣して作りあげたモデルのことです。 社会活動のモデルを作って、研修に取り入れてリアルに活動することが重視されて、楽しさの要素は必ずしも重視されない傾向があります。 たとえば、ビジネスシミュレーションは、表計算でファイナンスの効果を学ぶ、あるいは経営シミュレーションで経営を学ぶように、経営活動の構造全体を表現してリアルに活動できることが重視されますが、一般的なゲームのように興味を引くための演出やビジュアル要素は取り入れられないものが多いです。
一方で2000年代に出てきたシリアスゲームは、もっとゲーム的な側面が強いのが特徴です。 ルールに基づいてゴールに向かう過程で自分の起こしたアクションに対して結果がフィードバックされる、そのような活動に自発的に参加をすることがゲームの基本的な定義です。 社会的な目的で開発、利用されるゲームがシリアスゲームと呼ばれます。 ここにシミュレーションとゲームの違いがあって、リアルさを重視するのか、娯楽の要素や楽しさの要素を重視するのかというところが変わってきます。 広義にはシリアスゲームはシミュレーションも含めて呼ばれるところはありますが、ゲームとシミュレーションの違いはこのリアルさ重視か楽しさ重視かという部分に大きく表れます。
さらに2010年代に入って、ゲームの形態を取らずに、社会の活動の中にゲームの要素を取り入れていこうという考え方を「ゲーミフィケーション」と呼ぶようになりました。
シリアスゲームとの違いは、シリアスゲームはゲームとして開発されて利用されますが、ゲーミフィケーションはサービスやアプリケーションの一要素としてゲームが取り入れたものとして提供されます。ゲームでないものにゲームの要素を取り入れることがゲーミフィケーションですので、厳密に区別すると、シリアスゲームはゲームですが、ゲーミフィケーションはゲームではないという捉え方になります。一般用語としてはそこまで区別なくゲームっぽいものは何でもゲーミフィケーションと呼ばれているところもありますので、考え方として理解しておけばよいでしょう。
その区別を考えると、トレーニングゲーム(研修用ゲームのこと)という、ASTD(現ATD)というアメリカの人材・組織開発の団体の国際会議で出展されている製品を見ると、クイズやビンゴゲームやマッチングゲームなど、アプリケーションにしたらゲーミフィケーションと呼ばれているようなものが研修用ゲームとして紹介されています。実際の研修現場では、前述したようにシリアスゲームかゲーミフィケーションかというような区別はあまり明確でなくて、厳密には使い分けられていません。ですので、研修企画の時に「この企画はゲーミフィケーションでしょ」と言われる場合もあるでしょう。ゲームとゲーミフィケーションの違いを問われた場合は、ゲームの活動が主となるか、ゲーム以外の活動を主として部分的にゲームの要素を取り入れるかで区別すれば良いでしょう。