以前、「キャリア研修の意味」というコラムを書きました。
今回は若手のキャリアデザインについて書きたいと思います。
キャリアをデザインするという研修を実施している企業は昨今益々増えてきているように感じます。弊社でも営業でお伺いする中で、キャリアに関するご相談を頂くことも増えています。
その中で最もご相談の多い階層は、
- 若手社員
- 50代の社員
です。
特に若手社員のキャリアデザインに関するご相談は多いです。非常に一般的な話をすると、キャリアデザインとは、「現状」と「目標(場合によっては夢)」を明確にし、ギャップ認識から行動計画を立てることに他なりません。この方法にキャリアドリフトやプランドハップンスタンス理論(計画された偶発性理論)を一部かませれば、今風のキャリアデザイン研修の骨格はできてしまいます。
しかし、この方法は必ずしもあらゆる階層に通用しないというのが、今回のコラムです。
■定数-定数なら解は導けるが、変数-変数では解は導けない
先ほどの、「現状」と「目標」についてそれぞれ検討します。まず、「現状」ですが、就業経験・実務経験がない、もしくは浅い社員にとって、現状を正しく認識することは非常に困難です。キャリア研究の権威、E.シャインは、「キャリアアンカー」という「自らのキャリアを考える際に欠かせない価値観」について、キャリアアンカーは就業経験を経て固定化されるものだと言っています。これはつまり、「きちんと働く経験をしていない段階ではキャリア観は形成されないよ」ということです。ですからキャリアアンカーを診断して、仕事への動機を探ることはできません。また、就業経験の浅い段階では、経験や実績は偶然の産物であることが多く、それが本当に継続的に発揮されるコンピテンシー化したものかどうかは分かりません。また、「目標」というと、一般的に「夢」と混同してしまっているのが、若い社員の特徴です。「目標」と「夢」は明確に異なる概念です。
目標には「具体性」が必要です。しかも「達成」が常に意識されなくてはいけないので、「期限」が欠かせません。夢には「具体性」は必要ありません。こうなればいいなと思っていればよく、達成が必ずしも伴っている必要はありません。これを踏まえて考えると、多くの若手社員の語る目標は「夢」に過ぎません。学生のなりたい職業などはまさに「夢」であることが多いでしょう。(学生は、「就職」や「受験」など、「目標」慣れしているために、夢と目標を混同しがちです。)
夢が目標に変わるときとは、それが具体性を帯びたときです。そのときとは、仕事が具体的にイメージできた時に初めて訪れます。ここまででおわかり頂けたと思いますが、若手社員にとって、「現状」「目標」はいずれも変数なのです。このため、引き算をしても、明確な解(=ギャップ)が導けないのです。となると、当然ながら、解から導き出す具体的な課題も的外れなものになってしまいます。
■では、若手には何が効くのか?
弊社で考える若手向けのキャリアデザイン研修は非常にシンプルです。上記のようにビジネス・仕事がイメージできないという若手社員に対しては、それが具体的にイメージできるように、シミュレーションを行えばよいのではないかと考えています。シミュレーションという架空の空間において、発揮できる行動はきわめて現有能力と近いものです。同時にシミュレーションの振り返りにおいて、「ビジネスとは」という問いについて検討させ、足らない知識をインプットすることを通じて、「現状」を正しく認識し、「目標」を設定するために必要な就業観を付与できるのです。
弊社では若手がきちんとキャリアを考えることが出来るプログラムをリリースする予定です。ご期待下さい。
公開日: 2008年10月30日