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らしさについて

ビジネスゲームの開発をずっとやってきて、「フツー」のビジネスゲームを作ってよ、といわれて開発したシンセサイザー。フツーとは何かを考え出すのにかなりの時間を要しました。

数々のビジネスゲームを見てきて、それを一般化してみた結果、私の頭にあるフツーのビジネスゲームとは、

  • ビジネスをテーマに
  • 利益創出を目的に企業同士が対抗する
  • 複数非零和有限不確定不完全情報ゲーム

でした。これはひらたくいうと、

  • 複数の企業がいて
  • パイの奪い合いではなく各自が利益創出をし(パイの奪い合いは比較的PCと親和性が高いのです。)
  • 手数が有限で
  • 運の要素があり(個人的には運が入るゲームは好きではありませんが、軽く入れています。)
  • 相手の状態が完全には分からない

ゲームです。

そのフツーさに、ドイツゲームなどに代表されるメカニクスをいくつか盛り込み、形にしたのがシンセサイザーのバージョン1でした。

実施してみたところ、満足度も高く、申し分ないのですが、「らしさ」を消して作ったため、やり手としては、どうしても物足りないのです。なので、今回は、「らしさ」を少しいれてみました。

どの辺が、らしさなのかというと、個人的に創業以来ゲーム作りで意識してきたこととして、「個」の自立があります。

チーム戦のビジネスゲームは、必ずリーダーが自然発生的に生まれ、その意思決定に乗っかっていれば、考えなくても大丈夫ということが起こります。実際、シンセサイザーでも多少起こってしまいました。(チーム戦は、チーム内での一体感が生まれるのは長所ではあるのですが・・・)

私のこれまで作ったゲームの中では、この現象が起こったのは初めてでした。同時になぜ自分が「フツー」を志向してこなかったのかが明確になりました。

今回、シンセサイザーのバージョン2で実装したのは、この「個」です。チームビルディングを目的としたゲームとしては、「失格」の烙印を押されるかもしれませんが、チーム対抗でありながら、チームの中で優劣がつくという、ジレンマを導入しました。

次に、今回の大きな変更点としては、「政治」です。政治と言っても、別に政治色があるわけではないのですが、インタラクションを増すために、政治の要素をいれました。

ルイージの法則というゲームにおけるフレームワークがあります。ルイージとは。。。

  • ルール
  • インタラクション
  • ジレンマ

の略です。

シンセサイザーバージョン1には、インタラクションが足らなかったように思います。「インタラクション」というと、チーム間で攻撃をすることを思い浮かべる人も多いようなのですが、直接攻撃は、「イマドキ」のインタラクションではありません。イマドキのインタラクションは、真綿でクビをしめるのです。

どういうことかというと、外堀を固めて、相手が不利になるようにするのですね。実際の企業活動も今はこんな感じになっていると思います。(その点で、戦争のメタファで経営を語るのは今や時代遅れなのかもしれません。)このインタラクション実現のために、例えば、トップを縛るために、下位チームが団結して累進課税を導入するなどができるようになっています。

このように色々と変更を加えたものがver2です。ver2は、2度実施した結果、面白いことが分かりました。今回の改変で分かったことは、一体感がないことでver1と比べて満足度が低くでることです。(ゲームなので、それでも一般研修よりも遙かに満足度は高いですが。)

ただし、個が全面に出る分、学びや手持ちぶさた感は薄くなるようです。組織としての利益と個人としての利益のトレードオフには、明確な答はありません。このため、もやもや感も高いように思います。私は、もやもや感を重視しますが、どちらを重視するかは、先日「モチベーションマジック(3)仕事の現実を理解するために」で書いたように企業の風土によるのではないかとつくづく感じました。

このシンセサイザーver2も、近日公式にリリースしますので、少しお待ちいただければと思います。また、シンセサイザーは、4月末~5月上旬にかけて、新入社員研修の公開コースとして実施される予定です。

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