前回の続きです。
前回は「似ている」を3つに分け、そのうちの二つ「表層要素の類似」と「関係構造の類似」について書き、どちらが似ているとよりよいのだろうかという点で終わりました。
結論からいうと、「両方似ているのがベスト」です(笑)
答えになっていませんね。どちらかしか似せられないとしたらどうでしょうか。これは「場合による」というのが答えになります。
では、どんな場合に表層要素の類似がよく、どんな場合に関係構造の類似がよいのでしょうか。
実は、表層要素の類似性からの想起には限界があります。表層要素が似ているときに類推できるのは1対1対応するものに限られるのです。その点で前回書いた「低次」な思考ですむものの場合はモチーフが重んじられ、一方で「高次」なものについては表層要素の類似よりも関係構造の類似の方が重んじられるのです。
なので、ビジネスゲームは表層も関係も両方似ているものであればベストだけれども、それがない場合はモチーフが似ているものよりも仕組みが似ているものの方がよいということになります。
例えば、自分の仕事で言うと、例えばマーケティング担当者向けのビジネスゲームがあったとすると、そこで登場するモチーフ(例えば、自転車業界をテーマ)が現実世界(例えば、現実の自転車業界)と似ているかどうかよりも、その中で登場する仕組み(こういうことを行えばよい結果につながる)が似ていることの方が重要度が高くなります。
ふと思い出したのですが、研修業界では、「計画生産の製造業」をモチーフとしたビジネスゲームを「受注産業」の会社で実施していることがあります。これは、モチーフも仕組みも似ていません。ビジネスであるという点くらいは類似していますが、それでは表層要素が似ているというのには無理があります。両方似ていないビジネスゲームは多分「教養」か「エンタメ」としての効果しかないのではないでしょうか。
昨年、「エコーズ」という「受注産業向け」のビジネスゲームを開発しましたが、これが当初思っていたのと比べて注目されているのはこういう背景もあるからなのではないかと思います。研修ベンダーは表層要素も関係構造のどちらも似ていないビジネスゲームを押し売りしない方が自らのためなのではないかと思うときががありますね。
脱線しましたが、結論としては、ビジネスゲームにおける類似性の重要度は、
関係構造の類似性>表層要素の類似性
ですね。
さて、関係構造が似ているとよいというのはわかりましたが、関係構造が似ているビジネスゲームを実施しても、仕組みの類似性が想起させられるかは、もちろん振り返りにかかっています。では、どのように振り返ればよいのでしょうか。その振り返りのやり方を次回書きます。「保管した記憶を思い出せない」問題も大分確信に迫ってきた感じがあります。
公開日: 2014年7月6日