2017年に、とある会社から内定者向けに「サプライチェーン」のゲームを作ってほしいという依頼を受けました。
サプライチェーンはその名の通り、「供給」の「連鎖」のことで、最終的に消費者に届くまでに、原材料から始まって、どのように供給が連鎖しているかを表します。
例えば、漁師さんが魚を取って、水産業で加工して、GMS等の小売業で缶詰として販売され、といった一連の流れのことです。もちろん、一本道ではなく、缶詰であれば缶にもサプライチェーンがあります。同じ会社が一気通貫でやっていることもあれば、プロセスごとに複数の会社で分業して、一つのサプライチェーンが構成され、これが生態系(エコシステム)となっているのです。
昨今、M&A等も盛んにおこなわれますが、垂直統合や水平統合と言って、同じようなことをしている会社を一つにまとめたり、上流工程(川上)や下流工程(川下)を買収することで、戦略優位性を出したりといったことが行われます。アパレルにおけるSPAなどはその一つでしょう。
さて、どうして内定者がサプライチェーンを学ぶ必要があるのでしょうか。その答えは「仕事への意味づけ」が必要だからです。内定をとっていればわかりそうなものですが、実際に働いてみないと仕事のイメージやその社会貢献性が分からないものです。入社したらどのようなビジネスパートナーと関わるのか(上流はどの会社で、下流はどの会社なのか)、提供しているサービスはどのように最終消費者に届くのか、どのように世の中の役に立っているのか、、、といったことを知ることが社会人として組織社会化するためには求められるのです。
このゲームは簡単なパズルのようなゲームで、業態のカード(例;水産業)が大量にあり、それをテーブルのメンバーと議論しながら、連結してつないでサプライチェーンを作っていきます。もちろん、一直線ではなく、分岐もするため、ときには難しいと感じる場面もあります。「この仕事とこの仕事はつながっているのかな?」といったことを議論しながら、世の中に関する理解を深めていくのです。(ノイズとなるカードを何枚かいれると難易度が激変します。)
このゲームの目的を改めて書いたときに、当社の3つの別な研修を思い出しました。
1つ目は、「かちかち山」です。サプライチェーンとほぼ同じ時期に開発を行っています。かちかち山では、「提供価値(顧客価値)」というゲームモードがあって、自分たちの行っていることに顧客はなぜお金を払うのかといったことを考えていくものです。本件については、クレイトン・クリステンセンの「ジョブ理論」とも絡めて、ウェビナーを開催したこともあります。サプライチェーンとは異なりますが、アプローチとしては類似したものだといえるでしょう。
2つ目は、先日もコラムにかいた「ビジネスモデルキャンバス」です。当社はビジネスモデルキャンバスの補助ツールを出していますが、これも「バリュープロポジション」を中核要素として、その前後工程や収益構造を考えるといったものです。
3つ目は、2008年に業務提携を行っていた「インキュベーター」です。インキュベーターとは「孵化器」という意味ですが、創業前の2006年頃からお付き合いのあったマーケティングコンサルタントと提携し、当時私が某社でマーケティング担当執行役員をやっていた頃に、形にしたものです。例えば、事業差別化・新規事業開発・ソリューション・業務改善のためのアイデア創出であったり、事業の組み立てや仮説、課題設定などの事業を構想する力を強化(WhyとWhatの力)、事業構想を具体的な実行プロセスに落とし込む力(Howの力)の強化といったことができるもので、ある種のサブスクサービスの先駆的なものでした。
時系列で考えていくと、発想のベースに自分の起業家精神的なものがあり、それは私の中では「メディチインパクト」という本に集約されるのですが、交差点に生まれる「知」を端的に表していたものが「インキュベーター」であり、そこから震災前くらいに実施していたビジネスモデルの勉強会を経て、上述の「サプライチェーン」「ビジネスモデル」「顧客価値」といったところや、「アイデア創出」といったところに繋がっていき、現在では「企画」というところにもつながりを見せているのだと思うのです。
以下は、ご参考までに「インキュベーター」のビラです。体裁も古くて懐かしいです。
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カテゴリー: コラム総合 ,代表コラム ,当社の経営を考える
公開日: 2024年2月5日