忘れないうちに続きを書きたい。こうした振り返りは、すぐにやらないと消えてなくなって帰ってこない。(※このレポは開発時に書いています。)
第3期
第三期は、リーダー的存在がいなくなった2チームで混乱が起こった。ルールと勝ち筋を理解しているのがリーダーだけで、その他のメンバーは十分に理解できていなかったのだった。
これは、大人数でやるゲームで必ず起こる問題である。私たちの用語では、「お客様現象」と呼んでいる。強固なリーダーシップのもとでは、その下にいる人間の主体性が失われ、思考が停止し、「会社が誰か別な人のもの」になってしまうのだ。
リーダーの抜けたメンバーたちは、戦略を変更し、「研究開発」に手を出す。「勝てるか!?」研究開発路線のチームたちは内心こう思ったに違いない。戦略のブレは業績悪化の大きな要因である。
続々と研究開発を始めるキャッシュ獲得路線「だった」チームたち。
このゲームでは、研究をした案件のほうが売上単価が高い。そして、そろそろ研究開発路線をとったチームの成果が結実しようとしている。この追われることによる焦燥感が、戦略にブレを生じさせた。
焦燥感は、違うところにも影響を及ぼす。1チームで致命的なルールの勘違いが発生した。これも上記の「お客様現象」によるものだ。リーダーが仕切っていると発生しないミスも、リーダーが抜けて、これまで主体性を持たなかった人がリーダーになると、とたんに影響がでる。
第三期、かなり大きな動きが起きた。研究開発路線をとったチームのうち、最も赤字の大きく、同時に最も研究が早く終わったチームが大量の売上を獲得し、75億円の利益を出す。通算マイナス5億円まで盛り返してきた。逆に私のチームを含む2チームは案件にめぐまれず、赤字幅が拡大する。
元キャッシュ獲得路線のチームのうち、一チームに異変が起きた。通算利益120億円を超えていて、トップに近かったチームが、マイナス271億円の赤字を出す。キャッシュにものを言わせて、大量に仕入れたのに生産能力が追いつかなかったのだ。
とはいえ、大量に抱えた原材料在庫が次の期に一気に製品化されると、少し状況は変わってくるかもしれない。まだまだ逆転の目はある。
ここで、通算利益を発表する。
- 1位:180(キャッシュ獲得路線:先輩)
- 2位:マイナス5(研究開発路線)
- 3位:マイナス18(研究開発路線:私)
- 4位:マイナス51(研究開発路線)
- 5位:マイナス153億円(キャッシュ獲得路線:後輩)
そして、イベントが起きた。イベントは、ニーズの減少である。
コスト3群の案件が激減してしまったのだ。研究開発の遅れていたチームには大打撃である。ここまでキャッシュ獲得路線のチームがかなりコスト3の案件を消化していたこともあり、コスト3の案件は2枚を残すのみである。
それに対して、研究開発路線のチームは、売上の大きい案件を抱え、虎視眈々と次の大きな売上を狙っていた。
第4期
そして、最後の第4期。
研究開発路線のチームたちの逆転が始まった。技術を必要とするが利益率の高い案件を続々納品。
逆に、元キャッシュ獲得路線のチームは、製造能力の限界を迎えていた。どれだけ原材料があっても、3ラインで製造できる製品数は24までなのである。
「うわぁ、1足りない、1多い」
このゲームでは、コストを払うことで、お客様から受注した案件をお断りできる。そこで、どんどんお客様の案件をひくのだが、良い案件がやってこない。費用だけが膨らんでいく・・・
4位チームは、209億、3位チームは、249億、2位チームは、190億の利益を獲得した。逆に製品ニーズが枯渇したチームは、製造した製品を納品できず、219億とマイナス58億の利益となった。
最後に「風評被害」のイベントが発生した。案件を受注したにも関わらず、納品できなかった会社に、風評被害が起こってしまった。株主代表訴訟を受けた会社には、さらに66億円のマイナスが乗っかってきた。
これで、最終結果が発表になった。
勝者は、主催者である私。(ああ、大人げない。) 利益218億円。
2位は、185億で研究開発をしたチームだった。
3位も、研究開発チームで、158億円。
4・5位は、22億、マイナス60億と惨敗である。
勝者が私というのも、まことに申し訳ないので、賞品のディズニーランドチケットは、ゲスト参加者全員に配布された。キャッシュ重視チームが失策をしなければ、どうなっていたかはわからない。薄氷の上の勝利であった。
参加者の声はこんな感じだ。
- 全体を知らないと企業は機能しない
- 研究開発の大切さと怖さ
- ばらつきの大きいものはできるだけ排除すべき
- はじめの計画の大切さ
- 在庫管理と売り上げのバランスが大切
- 原材料から製品に至るまでの総コストの大きさ。意外と儲からないし、無駄なことはできない
- 借金は必ずしも悪いことではない
- 社長になって考えるゲームなんてしたことがなかったので、これまで自分のことばかりを考えていた
- 久々に会社以外で頭を使った
など。反応としては、悪くない。細かなバランス上の改善点は見えたが、うまく学びのあるゲームに仕上がったと思う。
最後になぜ、「想いがない、学ばせたいことがない」というゲームを作ろうと思ったかという種明かし。
これまでは会社の中で「部分」にフォーカスしたゲームをつくることが大半だった。「総合」であるためには、「部分」が目立ってはいけない。「部分」に対する思いはある。でも、その想いをゲームにいれると、その「部分」についての学びが大きくなりすぎるのだ。
なので、想いは抑えた。一般的なものになるようにすべての特徴的なものは排除し、できるだけリアルに、そして、「ギリギリの難しさ」を追求した。
もしかしたら、多くの会社で「難しすぎる」となるかもしれない。でも、「難しい」ゲームをやらせたい、でもパソコンを使わせたくないというニーズは明らかに存在する。そこを満たしたかった。
3月2日、ついにこのコンテンツが納品され、市場に登場することになりました。お客さまからは、「なんでメーカー経験ないのにこんなにメーカーの本質が分かってるの?」と好評を頂きました。そして、3月中にサイトにてリリースをする予定です。
2008年に作った会社経営シミュレーション。著作権の問題で手を加えられず、苦い思いをし続けながらも、開発する時間的余裕がなく構想だけを行っていました。3年かかってついに完成しました。
売れるかは全く分かりませんが、野心的なコンテンツですので、これからじわじわと育てていきたいと思います。
カテゴリー: コラム総合 ,コンテンツ ,シンセサイザー ,代表コラム
公開日: 2011年6月28日