コミュニケーションの研修の中で行う定番ワークに「コンセンサス実習」があります。今回は、「コンセンサス実習」について解説します。
コンセンサスとは?
コンセンサスとは、合意を形成することです。合意形成という訳語があてられます。合意は1名では行えませんから、「複数名の間での」という含意があります。また、そもそも合意されていることにさらに合意する必要はありませんから、意見の相違を合意に導くことという含意があります。これらをまとめると、コンセンサスは、複数名の間の異なる意見を調整し、合意を形成することです。
合意と同意はどう違う?
余談ですが、私は若い頃、合意と同意を勘違いしていました。同意は、誰かの意見に賛成することで、合意はそれぞれが意見を出し、全員が納得できるような状態に至ることです。誰かのそれに賛成することもあるでしょうけれども、対話を通じて新たな考えで同意することも多いのではないでしょうか。
同意は、自分の考えを言わずに「YES」といえばよいわけですから簡単です。しかし合意はそうはいきません。意を合わせるという字義の通り、意が表示されないといけないためです。意思表示を行わない場合には、合意ではなく同意になってしまうのです。
ソーシャルスキルの定義とは?
コンセンサスは、コミュニケーション上で必要なスキルの一つです。ビジネスシーンのみならず、他者が関わる活動であればプライベートなどでも求められることが多いでしょう。
コミュニケーションに関するスキルのことを「ソーシャルスキル」と呼びます。
ソーシャルスキルは学術用語なので、少し堅い表現となりますが、以下のように定義されます。(「相川充 人付き合いの技術―ソーシャルスキルの心理学(サイエンス社)」)
ソーシャルスキルは、対人関係や集団行動を上手に営んでいくための技能(スキル)で、対人場面において、相手に適切に反応するために用いられる言語的・非言語的な対人行動のこと
同書では、構成する要素の例として以下の9つを挙げています。
- 自分自身をあらわにするスキル
- 報酬を与える聞き手になるスキル
- 話し手を助けるように反応するスキル
- 内気に打ち克つスキル
- 人間関係を選択するスキル
- 人間関係を深めるスキル
- 人間関係における主張性スキル
- 怒りを管理するスキル
- 争いを避けて管理するスキル
実はコンセンサスはソーシャルスキルの複合体?
上記のリストには「コンセンサス」という言葉は含まれていません。
ただ、合意を形成するには、いくつかのソーシャルスキルを複合的に発揮する必要がありますから、業務においてコンセンサスが重要という場合には、ソーシャルスキルを個別に開発するアプローチだけでなく、コンセンサスを取るためのソーシャルスキルを複合的に開発するアプローチがありえます。
コンセンサス実習はそんなワークであると言えるでしょう。
ソーシャルスキルを開発するには?
ソーシャルスキルを育む上では、具体的な4つの方法論があります。「オペラント条件付け」や「リハーサル」などの4つの方法論については、以前もコラムに書きましたので、詳しくはそれらをご確認いただくことにさせてください。
このように日常に必要なスキルであるが故に、企業のみならず学校教育でもコンセンサスに関する教育がなされていることは多いようです。
コンセンサス実習の構造とは?
以前、専門誌「企業と人材」でアンコンシャスバイアスについて寄稿しました。その際に、コンセンサス実習で用いられるワークの構造について具体例を挙げて書きました。
本内容は、日本教育工学会SIG-05の会誌にも当社がソーシャルスキルをゲームで開発した事例として、2015年の会誌に、博報堂コンサルティング様と共同開発した「Marketing jam」の事例とともに紹介されています。
詳しくは記事をご覧いただければと思います。
次回は
コンセンサスを理解いただけたでしょうか。
ソーシャルスキルの応用だからこそ企業教育でも多く取り上げられるコンセンサス実習ですが、定番だからこそ見られることのなかった点がありました。
次回は定番研修の、とあるコンセンサスゲームのこれまで知ることのなかった一面と、当社の考えを紹介したいと思います。
公開日: 2021年7月2日