近年、「非認知スキルは対面で、認知スキルはオンラインで学ぶ」というトレンドが明確になりつつあります。この背景には、パンデミックによるオンライン研修の急速な普及と、その後の対面研修の復活があります。
今回は、非認知スキルと認知スキルの違いを軸に、それぞれに最適な学習形式と活用例についてお伝えします。
まずは、そもそも「非認知スキル」と「認知スキル」とは何かというところから説明します。
非認知スキルとは何か?
非認知スキルとは、協調性、感情的知性、忍耐力、リーダーシップなど、行動や態度に関わるスキルです。代表的なものとして、いわゆる「コミュ力」だと思うと分かりやすいかもしれません。本や授業で学ぶものではなく、「対話」「関係性」「空気感」といった人とのリアルな接触を通じてこそ深く学べる特性を持っています。
たとえば、当社が提供する「FB職人」では、フィードバックをテーマにした体験型のゲームで、先輩・後輩という異なる役割を体験します。ここでは、単なる理論や知識ではなく、フィードバックをする側・受ける側双方の視点から、感情や状況を理解し、適切なコミュニケーションを取るスキルを学びます。このような学びは、対面での人間的な交流を伴うことで、より効果的に身につくのです。
対面の研修では、グループワークやロールプレイのような「同期型」の学習が特に効果を発揮します。同期型とは、全員が同じ時間や場所を共有した学習のことです。同じ場に集まり、リアルタイムで意見を交わし、相互作用を体験することで、参加者はスキルだけでなく互いへの信頼や絆を深めることができます。
もちろん、集まれば信頼関係や絆が深まるという理屈はありませんが、集まらないよりは集まる方が信頼関係や絆が深まりやすいというのは直感的に理解できるでしょう。
だから、オンラインでなければならないという枷がなくなった今、非認知スキルはオンラインではなく、対面研修が良いという流れに落ち着いてきたのです。
認知スキルとは何か?
一方で、認知スキルは、本や授業で学ぶような知識の習得など、個人でも完結できる学びが中心となるスキルです。集団に対して最も効率的に知識を伝える仕組みとして、教育学者のデューイが教授法を作り上げ、現在の学校も概ねそれを踏襲しています。
ただ、それはオンラインがなかった時代の最も効率的な手法です。現在はオンラインという強い武器がありますので、知識の教授を通じた学びには、集中しやすいオンライン研修が非常に適しています。
更に、アーカイブが閲覧できるようになった今、全員が同じ時間に同じ場所に集まる同期型である必要はありません。例えば、海外では成長の段階や朝型・夜型といったものにあわせて学習の時間を変えるといった事例もあるといいます。学校の授業でおいて行かれた経験は誰もが持つと思いますが、特に、自分の能力に合わせて、自分のペースで時間や場所に捉われずに学べる「非同期型」の形式は、忙しい管理職層や多忙な社員にとって魅力的ですし、昨今から注目されるキャリアに合わせた「アダプティブ」な学習にも効果を発揮するでしょう。
パンデミック期に、当社は多々ウェビナーを開催しましたが、ウェビナーを録画した人材開発の方向けのアーカイブがあります。これは認知スキルを非同期で学ぶ学習に他なりません。繰り返し学習が容易で、自分のニーズに合わせて必要に応じて学べる形式は、人材開発のみなさまからは細く長くご覧いただいています。
▼ウェビナーにご興味のある方はこちら
【カテゴリー別】タイムシフト視聴可能な過去ウェビナー一覧
コロナ禍における当社の失敗
当社は、パンデミック期にオンライン研修に本格的に取り組み、既存の人気ゲーム研修をノーコードプログラムを活用してオンライン化しました。対面という選択肢のなかったパンデミック期には、この取り組みは画期的なものとして注目されました。
ただ、現在は環境が変わりました。特に、参加者間の対話や即時のフィードバックが重要となる非認知スキルの学習は、対面で集まれる環境であるにもかかわらず、わざわざ選択するようなものではないのです。
なので、オンラインで非認知スキルを学ぶ研修は、集合できない事情がある場合の代替策という位置づけになってきています。
対面とオンラインの融合: ハイブリッド形式の可能性
このように、対面とオンラインではそれぞれの特性に応じた役割がありますが、それを組み合わせることでさらに効果的な学びを提供できるのが「ハイブリッド形式」です。当社では、講義部分をオンラインで配信し、実践的なゲーム研修を現地で行う形式を採用しています。
二つ事例を挙げましょう。
一つ目は、今夏の同期型の事例です。東京から私が配信する講義を各地の会場で参加者が聴き、お客様の担当者が「パースペクティブ」のファシリテーションを行い、参加者全員で対面形式のゲームに取り組みました。このアプローチにより、認知スキルの習得と非認知スキルの実践を一度に達成できました。こうした取り組みは、パンデミック期ではそもそも選択しえなかったものでしょう。
もう一つは、非同期型の事例です。非同期ですのでライブである必要はなく、ライブである必要がなければ講師が誰であっても構いません。むしろ、言葉癖や粗の目立たない機械の方が向いているところがあります。なので、当社では音声を読み上げるAIを用いた動画を作成し、研修前に閲覧いただく仕組みを採用し、それを踏まえて後日同期型の対面研修に参加するという取り組みも行いました。
おわりに
研修形式を「対面かオンラインか」という二者択一で考える時代は終わりました。非認知スキルと認知スキル、それぞれの特性を理解し、適材適所で形式を選ぶことが、効果的な研修設計の鍵です。当社では、このトレンドを踏まえ、ハイブリッド形式も含めた柔軟な研修デザインを通じて、企業の成長を支援しています。
研修形式にお悩みの際は、ぜひ当社にご相談ください。私たちは、御社に最適な研修プランをご提案します。
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カテゴリー: コラム総合 ,代表コラム ,当社の経営を考える
公開日: 2024年12月2日