今年は年始からの緊急事態宣言で遅くなってしまったのですが、例年、年頭に仕事の振り返りを行っています。
昨年はあまりに変化が激しく、急遽6月末の期末に「波乱の第13期(2019年7月-2020年6月)を終えて」として振り返りを行いました。
今、読み返してもライブ感があって、半年前の自分から学ばせられることも多々あります。この時期は、まだ当社はオンライン化の黎明期なのでわかっていないこともありましたが、コロナの話やDX全般の話を書いています。
各取り組みについては、七転び八起き、七転八倒の状態でしたが、超高速でトライアンドエラーを繰り返したことで、全く違う会社になったといっても良いくらいトランスフォーメーションできています。
イベント「ゲーム研修運営の超基礎」開催(2月)
今は昔という感がありますが、各種ゲーム研修の体験会との併催で「ゲーム研修運営の超基礎」と題した講演をオフラインで開催しました。以前1日かけて実施した「ゲーム研修とは?」というテーマの有料セミナーをダイジェストでまとめたものです。この後すぐにオフラインのゲーム研修が実施できなくなり、本講演でゲーム研修に興味を持っていただいた方々には申し訳ない気持ちがありますが、振り返ってみると、ビフォーコロナの活動の集大成だったように感じます。内容の一部はメンバーの桐野と山田がコラムにまとめてくれました。
研修のオンライン化を紐解く(5月)
「ビッグワードを紐解く」は私のライフワークといえる活動です。雑誌「企業と人材」で4月から連載を開始したことと並行して、「研修のオンライン化を紐解く」と題した当社初のオンラインイベントを4月の導入研修が落ち着いた5月に開催しました。40名近い方にご参加いただけ、非常に嬉しい場になりました。不安感もある中ではありましたが、繋がれた実感が得られたように思います。
コロナの影響がで始めた2-4月で「オンライン」という言葉のユレがとても気になっていたためです。「zoomを使えばオンライン化?遠隔地と繋げばオンライン化?e-learningもオンライン化?」といった混乱があり、前提を整えないと議論が難しいと感じたんですね。
ここでは、オフラインとオンライン、リアルとバーチャル、リアルタイム(ライブ・ストリーミング)とタイムシフト(オンデマンド)、ローカルとリモートとe-learningといった言葉を整理しました。当社の力では、言葉を世の中に定着させるには至りませんでしたが、今に至るまでここで学んだ用語を軸に社内の用語の明確化をしているというお声をいただき、やってよかったと感じています。
セミナーでは難しくなりすぎないように意識しましたが、このセミナーを理解する上で大切な「レトロニム」を切り口に、本セミナーのレポートを書きました。
徹底的なオンライン化実験を経て
その後、双方向を「勉強会」、一方通行を「説明会」と分けて、セミナーを数多く実施しました。まずは、オンラインに強くなることを意識し、既存のリソースを用いて準備がそれほど必要のないものや、先を見据えてコンテンツ化しやすいものを優先的に実施しました。
まず、勉強会は人事の皆様が色々と知識を獲得していただけることを目指していました。5月には当社の方向性の一つとしてHRサミット2019で実施した「これからの研修の鍵は知覚へのアプローチにある」をリバイバル講演しました。また、6月には「研修内製化のためのEXCEL入門:カリキュラム編」です。勉強会はこれを最後にほぼ実施していません。勉強会は性質上、録画が難しく、再利用が難しいことと、当時の技術的に双方向がやりきれなかったためです。
説明会は6月だけで5回実施しました。ここでは毎回新しい技術課題をクリアすることを掲げ、同時に説明会用のスライドも作成しながらだったのでややハードでした。こちらは録画機能で録画しており、今でもご希望があればご覧いただくことはできますが、まだまだ技術的に荒く、現在の水準とは大きく違うことがわかります。
この6月の時点で、ソフトウェアを用いて、リアルタイムで画像を合成しながらセミナーができるところまで技術的な進歩を成し遂げました。目指し、実現できたのは、先行するサービスであるudemyやストアカのクオリティです。当時は立地的に救急車の音がうるさく、ノイズキャンセリングのソフトを入れたりしました。新オフィスでは新たな問題として、西日が差し込んで顔がハードボイルドな印象になる細かい粗はあります。ただ、パワポ・ブラウザ・エクセル・モニター1・モニター2などをリアルタイムで自由に使い分けて操れるようになり、短期間でのキャッチアップとしては満足の行くものだったのではないかと思っています。
進まないオンライン化と、難しい内製化
会社によって受け入れるリスクが異なるという話については、当社のように多くの会社と接点があるからわかることで、同じ会社にいるとわからないところもあるのかもしれません。当社のお客さまのオン・オフの比率は先日メルマガで共有した「オンライン率4割弱」には全く見えません。研修を実施している場合は、オンライン率8割です。まだ研修を再開できていない会社もかなりあり、これからオンラインの準備というところもまだまだあるという印象です。コロナの収束についてもまだ拡大期にあり、短期的な収束は期待できないと判断しました。
また、「研修内製化というドメインが一時的に極めて揺らいだ」という認識をしておりましたが、研修内製化というビジネスは一時的ではなく持続困難なレベルで成立しなくなってきています。当初は、企業は早期にオンラインシフトして行くと見込んでいましたが、それが想定以上に遅いことが明らかになってきており、「外注ならできるけど、オンラインで研修を自分で行う自信がない」という声も多くなりました。もちろん、その理由には様々なものがありますが、研修講師でも同じことが起こっている通り、新しい技術への習熟やそれを実現するための機器の問題といったものは根深く、現時点でもオンライン研修を行うために求められるスペックのPCや通信環境といった話題(受講者ではなく講師側)はまだまだあります。当社は、全メンバーにCore i7搭載のPCを提供し社内もwifi6にするなどの環境整備を行ってデジタルシフトしましたが、なかなか用意なことではないようです。(このオンライン投資については後日コラムに書きました。)
また、研修内製化というぶれない軸を持って活動すべきではありますが、研修内製化はあくまでもゴールであり、研修内製化はやはり講師経験があるという前提で成立することも理解できました。オンラインになり、オンライン研修を見たことがない人ばかりになった時期には、やはりやり方を見せることが結果として研修内製化につながります。これについては次項で詳しく書きます。
まるで起業当時かのようなローギアでの仕事に
次に、当社では「講義型」という名称で「講義+ワーク」を用いた非ゲーム型の研修の提供を開始しました。これはゲーム研修という応用的な研修を行う前段階として、講義とワークという基礎的な内容は問題なくできるようにするということと、「講義型」のやり方を多くのお客さまにわかっていただくことと、コロナより前から予定していたものでしたので、それを遂行する時間が得られたという点では僥倖でした。
リリースした結果としては、オンライン体験会を実施した「段取り」については、いくつもご発注をいただけた点では嬉しい結果でした。一方、思っていたよりもご参加人数が少なく、かつ、私たちの営業の問題なのかもしれませんが、他の「講義型」へ発展することもありませんでした。オンライン体験会はウェビナーとは異なって1度しか実施できないため、私が講師をする限りは、当社のビジネスとしてはテコの原理が働かない取り組みとなりました。このため、今後は外部の方にお願いするなどしてデリバリーすることも考えていきます。(こちらは2022年に本格的に運用開始しました。)
メンバーがバックアップしてくれて脱出できた「無理」という思い込み
ゲーム研修については考えさせられることが多くありました。まず、私たちが期待されていることはやはりゲーム研修なわけです。「ずっとも」を停止し、まさにリブランディングをしようとしている最中でのコロナ襲来でしたので、リブランディングしきれておらず、まずはゲーム研修をオンライン化してほしい、これまでに買ったゲーム研修をオンライン化できないか、昇進昇格の要件にいれているのでどうしたらよいか、といった様々なご要望と、たった一つのゲーム研修を作るために、半年から1年かけてきたものをすべて作り直すのかといった様々なことに優先順位をつけることを求められました。
結果としては、短期的には「講義型」ができずに「ゲーム型」もないということで、夏まではここに注力をしました。私自身は、正直なところゲーム研修の開発を10数年かけて一つずつやってきていたので、絶望感に打ちひしがれ、「無理」という判断になっていました。
ただ、やはり個人ではなく組織でやっている良さもあり、当社のメンバーが改めて当社のブランド価値について理解させてくれたり、自分では届かないような活路を見出してくれたりということもあって、基礎技術の賜物である「ウェブ会議のクスリ」は告知不足でセールス的にはまだまだですが、メディアにはかなり取り上げていただきましたし、解決昔話のオンライン化、イエナイヨのオンライン化にもつながっていきました。
高橋、左目が見えなくなる
ここで、ここからの半年を説明するには避けられない出来事がありました。8月に眉間をぶつけるアクシデントに見舞われて、利き目である左目が霞んで見えない状態になったのです。右目だけで仕事をすることで酔いや眼精疲労などのフィジカル面のみならず、普段活用していない側の目を使うと脳の興奮状態が違うのか、自律神経にも影響がでて、慣れるまで約3ヶ月はかかりました。特にアクシデントから11月末までの3ヶ月くらいは正直なところ、記憶も曖昧なほどの不調でした。慣れただけで回復の兆しは薄く、仕事量を絞らないといけないことになりました。
伴って、12ヶ月を予定していた連載も9ヶ月で中断し、長年頂いていたお仕事も細かい作業に耐えられず、お断りすることになりました。創業してからこれまで、どれだけ過労でも働いてきたので仕事量を絞ることが少しショックもありました。そもそもコロナ禍で膨大に膨らんだ業務量の中でやらないことを選別していたあとだっただけに、必要で欠かせないものを手放していくような悲しい感覚に襲われました。
この目の影響で緻密な作業を要求されることを自己完結できにくくなり、秋は自分のアウトプットを信頼しにくくなりました。(かといって書きたい意欲は収まらないので、校正なしで気軽に投稿できるnoteというウェブサービスにスマホから書いています。)
強い問題意識を持っているものや、事業として発信が不可欠なものしか書けない状況がありました。実に半年で3つしかコラムを書けていません。
この時期には、各社の使用するプラットフォームの種類や仕様が次々に変わることの影響を受けました。ここでの様々な反省から、「当社は研修会社であり、システムメンテナンス会社ではない」と社内に宣言し、個社ごとのご事情については理解するものの、お客様側であわせてもらうより仕方ないという結論に達しました。ここで書いたのが、「研修にzoom版は作るべきか?」です。
また、当社としては満を持して8月から講義型研修の提供を開始したのですが、どうも当社のブランドと行っていることにギャップがあるようで、10研修というボリュームをなんとかした一方で、お客さまの注目度としては「ふーん」という感じでした。とあるお客さまからは「「受け放題サービス」があるから正直必要ない」というようなコメントを頂き、「受け放題サービスで提供されるものとは大きく違うことを説明する必要がある」と感じることになりました。ここで書いたのが、「かつて講義型研修の提供を止めた当社がなぜ今提供を再開するのか?」です。
また、当社は「研修内製化」というイメージが強いのか、「初回講師派遣」といった導入サポートがほとんどご理解いただけていない状態になりました。このため、急遽書いたのが「当社の初回講師派遣など3つの知られざる内製化サポート方法とは」です。
実は最も力を割いたバックオフィス業務とそこから生まれた2つのセミナー
これと同じタイミングで行っていたのが、置き去りにしてきた裏方業務です。決算、移転といった大きなものだけでなく、感染対策と知財を何とかするための果てしない旅に入りました。
新しい料金体系、新しいサービスとそれに伴う新しい契約書などです(細かい契約書などをチェックするのが本当にしんどい状況でした)。この仕事に取り組んだアウトプットが、「感染対策をしながら体験型研修を行う5つの意外な方法」と「オンライン研修にはどんな知財リスクがあるのか?-知らないとピリつく研修の著作権の話」でした。前者は、その時点でのあらゆる感染対策を網羅的に説明できた点でご好評いただきましたし、後者は、まさに従業員の知財に関するコンプラ違反が続出しているというコメントもいただき、タイムリーに実施できたのではないかと思います。
年末にようやく解けた難題
私が個人的に悩んできたのが、ルールが異なるゲームは同じゲームなのかという問いです。少し違うだけならまぁ許容はできるのですが、大幅に違っていると「似て非なるもの」になってしまい、同じ商標に「-オンライン-」とつけて売り出すことに誠実さがないように思うのです。ここについても、年末の社内での打ち合わせで少し解決できるように感じましたので、まさに年末年始に企画を行い、4月の新人研修に向けてなにかできるような気になってきました。
2020年は皆様と同じく、ほぼ通年で変化の年でした。2021年は飛躍のため、尽力していきたいと思います。
関連リンク
公開日: 2021年1月31日