研修開発の仕事は、まさにそのテーマにおける自分の理解をじわりと高めてくれる。今、価値観に関する研修開発を行っているが、そこで発見したことを書き留めておきたい。
価値観とは、非常に曖昧な概念だ。価値観は重要だという点に異論は少ないだろうが、価値観を具体的に掘り下げていくと、わからなくなることがある。
とあるところで、価値観のワークがあると耳にした。手順として、まず「大事にしている価値観を1つ挙げる」そうだ。ただ、このワーク、実際に運用すると機能しにくいだろう。なぜなら、価値観を挙げろといわれてすぐに価値観を挙げられるほど、私たちは価値観に詳しくない。自社のバリューを作った経験のある私であっても、1つに絞るとなると頭を抱えるし、絞る必要がなかったとしたならそのワークには意味が薄いだろう。学生の就職活動で重要だとされ、考えるほど学生が袋小路に入りやすいのも価値観である。
このように、価値観は、きちんと検討しなければ明確にならないが、きちんと検討するためには題材がないと難しい。なんとも厄介なものである。
さて、ここからが今回の開発知見である。当社では、上述のように「題材」を与えることで価値観が検討できるツールの開発を進めている。こうしたツールは、作ったらすぐに上市するわけではなく、綿密なテストを重ねてから上市する。
テストの中で、価値観を検討したところ、性質が2つありそうだという話になった。「しなければならないこと」と「やりたい/ありたいこと」である。極端かもしれないが、仕事の価値観で考えてみよう。例えば、「死なないように安全に働くこと」は重要だろうか。これは当然である。死なないことは極めて重要である。ただ、その人の仕事における価値観として「死なないことを大事にしています」というと、何か違和感はないだろうか。これは価値観といえるのか。企業にあてはめると、倒産しないことが最も重要な価値といえるのだろうか。
「しなければならないこと(must)」と「やりたい/ありたいこと(will)」のどちらを重要と考えるべきか。もちろん「しなければならないこと」を重視しても間違いではない。「しなければならないこと」はやって当然なので漏れがちだし、食品会社では安心や安全は重要な価値である。ただ、やりたいことを価値観とする方が私にはしっくりくる。なぜなら企業は使命(ミッション)のための集団だからだ。当社のバリューは「Innovative/Creative/Fun」であり、これを遂行しているから当社が当社であると世間に認められているわけだし、社員は当社らしい働き方ができるわけである。
ただ、悩ましい点は、これは「やりたい/ありたいこと(will)」に見えるが、当社が当社であるためには「しなければならないこと(must)」であるということだ。こう考えると、結局「やりたい/ありたいこと(will)」も「しなければならないこと(must)」も同じなのであるが、この議論が実は重要だということが分かった。この議論を経ずに重み付けを行っても議論が平行になってしまうのである。
カテゴリー: かちかち山 ,代表コラム ,新規事業 ,開発裏話
公開日: 2018年2月10日