先週から今週に掛けて、部下育成に関するご相談が相次ぎました。
共通していたのは、管理職が多忙化する中で、部下育成にいかに興味を持ってもらうかという点です。
このお題は、”自分の働きによる短期の成果”と”人に働いてもらったことで生まれる長期の成果”がある中で、前者に目が向いている状態をいかに後者も含めて考えてもらえるようにするかと読み替えても良さそうです。
部下育成に興味を持つことと、長期の成果に目を向けることは似ています。なので、
・「短期と長期のトレードオフの状況を認識させる」
・「その状況でどのように振る舞うべきかを考える」
という二点が重要です。なので、それぞれをどのように考えていけばよいかを書きます。
まず、「短期と長期のトレードオフの状況を認識させる」というお題ですが、トレードオフの中で「ベター」な解を考えるには「システム再現装置」であるゲームが最適ですので、ゲームで考えてみます。
このお題は、色々なアプローチで解決できます。「比較優位の法則」などでも良いでしょう。ただ、今回は「フロー理論」と併せることで解決できると考えました。
フロー理論をご存知の方は、「えっ、フロー理論と部下育成がどう関係があるの?」と思うでしょうし、ご存知でない方はフロー理論をまず知りたいと思うかもしれません。
フロー理論をざっくり説明すると、「自分の能力と課題の難易度がフィットする状態が最もハマれる」というものです。フロー理論と部下育成は、実は関係しています。
まず、管理職が全部自分でやる場合、自分の能力に合っていない仕事が必然的に多くなります。これは「退屈」です。自分でやった方が早いかもしれませんが、人に任せてしまった方がベターです。
管理職にとっては退屈でも、部下にはハマれる仕事ということがあります。また、同時に管理職は空いた時間でハマれる仕事に取り組めます。こう考えると任せた方が双方ハッピーなのです。
能力・課題の難易度によるフローと、人材とその成長が表現できるゲームがあれば、部下育成のトレードオフ状況を認識した上で、権限委譲を通じて部下を育成することで組織が発展しうるという考え方を認識させられそうです。これによって、「短期と長期のトレードオフの状況を認識させる」はクリアできそうです。いつか開発してみたいというお題です。
さて、2点目の、「トレードオフの状況でどのように振る舞うべきかを考える」というお題ですが、処方箋としてコーチングなどを提供している会社が多いように思います。ただ「多忙」な管理職たちに「待つ」ことを促すコーチングは正直厳しい。私自身も、研修業界を長く経験した一人の管理職として、「待ったほうが良いということはわかりながらも多忙さにかまけてそれができない」を肌で感じます。考えさせる手法は、部下の回答スピードが遅い場合に、待ち時間が長くなり、その時短のために誘導尋問を促してしまい、それで失敗しがちです。
で、どうするかというと、ゲーム開発者の暴論かもしれませんが、上司が一から十まで指導する(ここにはコーチングするも含みます)という発想を捨ててもいいんじゃないかと思います。コーチングは部下の考えを支援するために行ないますが、わざわざ多忙な管理職が待ちながらやらなくてもいいような気がするんです。代わりに、上司は部下に「考えるためのツールを参照する」という教育を徹底すれば良いのではないかと思います。
名前をつけるなら例えば、セルフコーチングカードとかリフレクションカードとか、部下同士で相互やるならピアコーチングカードとかフィードバックカードとかになるかと思います。ある意味で発想ツールとなるこうしたセットを使うように指導を徹底することで、管理職の多忙さと部下の成長の折り合いがつけられそうです。
当社の新境地を切り開ける可能性があるなと思っており、社内で実験してみようと思っています。結果はまたどこかの場で公開できたらと思います。
公開日: 2017年7月3日