遊戯用に作られたゲーム(以下、エンタメコンテンツと呼びます)を「研修用」に利用することがあります。用途がビジネスですので、広義のビジネスゲームと呼べるのですが、利用する際には、注意しなければならないことがあります。以前、「良く考えられていないビジネスゲーム」というエントリを書きました。
学習には「直接学習」と「付随学習」の2種類があります。直接学習とは、学習のための活動で学ぶ、習得すること、付随学習とは、何かの活動のついでに学ぶ、習得することです。
学習コンテンツは、直接学習と付随学習を同時にこなしています。それに対して、エンタメコンテンツは、遊戯用なので、元々は直接学習を設定していません。ただし、人は何からでも少なからず学ぶので付随学習があります。そこでエンタメコンテンツに含まれる付随学習の要素を「目的だ」と強弁すると、付随学習は直接学習になり、学習コンテンツになります。(これ、面白いですよね。)
例えば、スーパーマリオが、敵が迫ったらジャンプして交わしたり、踏みつぶすという状況対応を学ぶとか、危機が迫った状況での対応を学ぶコンテンツだといわれたり、ドラクエが横文字のモンスター名から英単語を学ぶコンテンツだといわれたら、「え・・・」と思うでしょう。
エンタメコンテンツを学習目的に転用する場合は、付随学習を直接学習に切り替えることになるのですが、「直接学習に切り替えるに足るものか」を検証する必要があります。
学術的ではないですが、楽しみを目的とした「直接エンタメ」と何か別な活動の結果、楽しめている「付随エンタメ」という区分もできると思います。直接学習を設計したのに、付随エンタメの要素が強すぎると付随エンタメが主になってしまいます。
思うに、どんな場合も「学習>エンタメ」になっていないと、世の中から学習コンテンツだと認められるのは厳しいと思います。ただし、エンタメ部分を減らしてしまっては、本末転倒ですから、どうやって学習部分を増やすかを考える必要があります。これが学習デザインの専門家の仕事になってきます。
ここがなされていないため、多くのエンタメコンテンツの研修での利用は、チームビルディングや段取りやPDCAなどの研修としてしか用途が見いだせないでいます。そして、更に言えば、多くの場合、「ゲーム」という楽しいけど時間がかかる手法をわざわざ使わなくても広義で十分というものが沢山あるのです。もちろん、全てのエンタメゲームが研修に使えないと思っているわけではありませんが、多くのものに無理を感じます。
これらの研修も、当社が作っている研修も、この区分をしらない方からすれば、同じ「ビジネスゲーム」です。ただ、そもそも学習向けに作ったものと無理矢理研修用にしたものでは随分違いがあるのです。学習向けに作られていないものを提供されて、「学べない」と感じる参加者や人事さんができるだけ少なくなって欲しいですし、提供者側も「研修」としてやるからには、学びのことを勉強して欲しい。研修の未来のためにそう願ってます。
公開日: 2013年7月31日