研修用ゲーム開発の考え方は、多くの遊戯用ゲーム開発の考え方と似ていると思われがちですが、実はかなり異なります。全てを紹介するのは難しいのですが、代表的なものをシリーズ(といってもいつ何回書くかは未定です。)で書いてみたいと思います。
研修用ゲームと遊戯用ゲームの最大の違いは目的の違いです。研修用ゲームは「学び」を目的とし、遊戯用ゲームは「楽しみ」を目的とします。この違いは、「楽しさ」と「学び」を両立させる、もしくは「楽しさ」を犠牲にしてでも「学び」を追求しなければならないという点で随分違いがあります。
良い遊戯用のゲームは「同じ人物による複数回の使用に耐えられる」という制約があります。では、研修用のゲームはどうかというと、研修の場面で使われる訳ですから、同じ人物が複数回同じ研修を受けることはほぼありません。このため、リプレイアビリティが不要なので、「ネタバレするようなイベント」を入れたり、「ゲームバランスの破綻」が許容されます。
まず、「ネタバレするようなイベント」ですが、遊戯用のゲームは前述の通り、何度もプレイしますから、そのイベントが起こると分かっていれば、それを回避するように準備が可能です。研修用ではその回避が必要ありません。例えば、当社のゲームには、残業させすぎると労働基準監督署に駆け込まれるというイベントが起こるものがあります。残業をさせすぎてはいけないことが明示されていれば参加者は社員に残業をさせないように回避します。しかし、明示されていない場合、残業させることで数がこなせるとか利益がでるとか、その選択に誘因があれば、そのイベントに影響される選択をすることがあります。ゲームは1度だけしか行いませんので、こんなものがあっても問題ありません。(遊戯用の場合は、イベントカードをランダムにしたりして回避します。)
次に、「ゲームバランスの破綻」ですが、ここでいうゲームバランスの破綻とは、「絶対に選んだら不利になる選択肢」のようなものを指しています。例えば、「銀行から借りる」選択肢と「投資家から資本参加を募る」選択肢があったとしましょう。この場合に、明らかに資本参加が効率が悪いとします。遊戯用のゲームでは、「明らか」な悪手はテストプレイ段階で必ず除外されます。なぜなら、複数回遊ばれるうちに、悪手は発見されてしまい、誰も選ばなくなってしまい、その要素がゲーム中に入っていることに意味がないからです。このため、どの選択肢もそれなりに魅力的なようになっていることが良い遊戯用ゲームの条件になっています。逆に研修用のゲームでは、悪手が悪手であることを見抜くことが学びにつながることがあります。ラーニングポイント次第で悪手をあえて残すことがあります。
こんな風に同じゲームといっても作り方には結構コツがあります。
脱線しますが、会社はどこの会社もそれなりに合理的な集団によって経営されています。このような集団によって経営されていれば、そうそう大きな判断ミスはしません。しかし、たまに何かのきっかけで悪手が選択されることがあります。この積み重ねが企業の力の差になってくると最近考えています。この考え方からすると、悪手が存在する状況下でどのように悪手が悪手であることを見抜くか。それがビジネスゲームによって養えるように思います。
公開日: 2013年5月2日