当社では、体験会や研修ではいつも、「満足度」「楽しさ」「学びの深さ」についてのアンケートをとっています。
当社の主力商品は「ゲーム」研修ですので、アンケート結果は「相対的」につくことが多く、上記の3つの中では、「学び」については他の2者と比較すると低めの評点がつくことがおおいです(ただ、終わった後に、これまでに参加した研修と比べてどうかと聞くと、「最も学びが大きかった」ということも多いので、「相対的」なんだなぁと理解しています。)
ただ、同じような研修を提供していても、この「学びの深さ」のスコアに差がつくことがあります。この差は一体なんなのかといつも考えさせられます。
正解のない話ではありますが、思うに、「落差」が1つの答えではないかと思います。
落差大のもの
「知らなかった」状態が、「知っている」状態に変わる
あるいは
「できなかった」状態が、「できる」状態に変わる
という落差の程度が大きいほど、「学んだ」と認識されやすいことがわかりました。
例えば、当社では財務研修のパースペクティブは、全然わからない財務が大幅にわかるようになるので、この点で学びのスコアは大きくなります。
落差中のもの
次に、
「知っている」けれども「できない」状態が、「できる」状態にに変わるもの
が「学びが深い」と認識されやすいようです。
例えば、当社であれば、モチベーションマジックがそれにあたります。
「気持ちを切り替えなければいけないことはわかっている。でも、できない、やり方をしらない」という状態が「できる」に変化すると、学んだと認識されます。
しかし、落差大のものほど、スコアは高まりません。
落差小のもの
最後に、
「知っている」ものを「改めて知った」
というものがあります。
当社の未発表とあるゲーム(あえて名前は伏せます。)がそれにあたります。
そのゲームが扱うのは、道徳的でおそらく普通の人であれば、誰もが知っていることです。
それは当たり前すぎるために、意識の表面に現れていないことがほとんどです。
そこに働きかけることができます。
ただ、残念なことに、「知っている」ことをあらためて教えられて、「意識する」ようになっても、「学んだ」という印象は得られにくいようです。
学びが浅いと「よくない」のか?
となると、そういうコンテンツは良くないのかと思われる方もいるかもしれません。でも、そういうわけではありません。企図している学習目標は確実に達成されています。これは性質が違うだけです。
ビジネスゲームは、手法として目新しいものであるだけに、「魔法の杖」としての用途を期待されることがあります。
しかし、手法は手法にすぎず、魔法の杖ではありえません。
研修は、企図が実現できているかが大事なのです。
商業性と学びの深さの両立について
パースペクティブのような学びの「深い」ゲームは商業的には売れます。
繰り返しますが、「知らなかった」状態が、「知っている」状態に変わる、あるいは「できなかった」状態が、「できる」状態に変わるからです。これは、導入側にとっても、非常に導入しやすいのだと思います。
学びの深いゲームを作る肝は、「鞘取り」と「革新」なのかなと思います。
「鞘取り」は、みんなが知らず、知ることに価値があって、、、という「鞘取り」をすることです。
「革新」は、誰もが取り組んでいるけれども、良い方法がないものを「革新」する。
この2つのどちらかで、「深さ」が実現できると感じます。
ただ、これは狙ってできることではありません。
「鞘取り」についていえば、そんなに都合良く鞘取りできる市場があるはずはありません。
市場で価値がないと放置されている概念は、多くの場合、知っても意味がないから、もしくは非常に困難だから放置されているわけです。つまり、あくまでも、多くの人が認識している不足を埋めることに価値があるのです。でも、それは数が少ないために持続性がありません。
「革新」についていえば、先人が数々取り組んできて、成功に至っていないことを成功させるというのも、非常に困難な道のりです。当たれば大きいのでしょうし、社会的意義も大きいのはわかりますが、個人的にはギャンブルのように思うところがあります。
当社は、一発屋やギャンブラーを志向しているわけではありません。あくまでも、継続企業であるために継続的に安定してビジネスをしていきたいと思っています。
この中で、「学びの深さ」だけにこだわることは正道なのかと悩みますが、研修は学習目標の設定次第ですので、必ずしも、学びの深さを成果指標としなくても良いのかなと最近思うようになりました。※もちろん粗製濫造することを指していません。
学びの深さがどのように表れるかはコンテンツの性質次第ということがわかりましたので、確実に学習目標が達成できるものを作り続けることを今後は重視していきたいと思っています。
本件は、個人的に大きな変化でしたので、少し大切に考えていきたいと思います。
公開日: 2012年9月20日