8/31に大手企業の新入社員60名弱に、組織市民行動と成果行動のバランスから職場の行動を考えるゲーム(通称「もそドラ(仮称)」)の研究と研修を兼ねた実践をする機会を頂くことができました。
これまで長いこと研究に協力し、昨年は人材育成学会で発表を行ったものなのですが、今回はその追跡研究(?)にあたります。ふと、この件を全くこのコラムに書いてきていないことに気が付きました。
なので、今回は、企業内実践で使った組織市民行動についての振り返りを抜粋して記載します。
これをお読みいただければ、最近高橋がつぶやいている「組織市民行動」というものが少しわかっていただけるかなと思います。
1.成果行動と組織市民行動
「成果行動」とは、社員が必ず取らなくてはいけない行動です。これは、会社から公式に求められている行動であり、会社及び個人の短期的成果に直結します。
「組織市民行動」とは、
任意の行動であり、
公式の報酬システムによって直接、
もしくは明確に承認されているものではなく、
集合的に組織の効率を促進する行動
です。これは、会社の長期的成果に貢献します。
2.組織市民行動の2つの側面
組織市民行動には、
- 長期的成果の向上に貢献する行動
- 長期的成果の減少を抑止する行動
があると考えています。
長期的成果の向上に貢献する行動は、例えば「援助行動」などがあります。
長期的成果の減少を抑止する行動は「誠実さ」「礼儀正しさ」「スポーツマンシップ」などがあります。
例えば、「援助行動」には、
- 無理してでも仕事の問題を抱える同僚を助ける
- 辛い仕事や個人的な事情があっても同僚に対しては心から気遣い、丁重な態度を示す
- 頼まれなくても誰かを助ける
- 個人的な問題を抱える同僚を支援したり勇気づける
- 自分の行為が他の従業員に影響を与える前に、そのことを周囲に知らせる
などがあります。
「なんだそんなことか」というような事ばかりです。でも、これらは大事なのですね。
3.成果行動と組織市民行動の関係
会社の仕事は、公式に定められているものとそうでないものがあります。そうでないものについては、誰のものでもないので、お互いに分担しながら行っていく必要があります。
とある方から話を伺うと「もう自分の仕事は終わりました」といって帰ってしまうというケースが最近増えているようです。
これだと、隙間の仕事は埋まらないのですね。なので、率先して誰の仕事でもない仕事を埋めに行くことに価値があるのです。できれば、そうしたいという人も多いのではないでしょうか。
しかし、個人の時間は有限です。だから、成果行動と組織市民行動の双方を両立することは難しく、あちらを立てればこちらはたたず、というトレードオフの関係にあります。
なので、個人は、「どちらを選べば良いのか」というのかというジレンマに常に悩まされる。
ゲームでは、回ってきたチャンスで、成果行動と組織市民行動のうち、1枚しか選択できないというルールでそれを表現しました。
若手は、個人成果を強く要求されるのが常です。それを満たすことで成果が出せます。みんなが組織市民行動だけをやっていたら会社はつぶれてしまうのですから、これは当然です。
ゲームでも、個人成果の合計が少なく、組織市民行動が多すぎたら、ダメです。逆に、個人がどれだけ頑張っていても、組織市民行動が少しだと、会社目標には届きません。
4.バランスを考える
ゲーム中に参加者は、他の人の場の札を見る傾向があります。それはなぜか?それは、他の人がどの程度成果行動をとっているのか、組織市民行動を取っているのかを知るためです。もちろんその目的は会社の発展にあります。周囲をよく見て、誰かが成果行動ばかりだと思ったら、自分は組織市民行動を強くするなどして、会社の生態系はできあがっています。
周囲を良く見ること。
- 困ってそうなら助ける
- 成果が出そうな人を支援する
- 自分の仕事じゃなくても、
誰もする余裕がなさそうならやってみる
・・・などをして、ゆがみがでない程度にバランスを考えて行動することが大事なのです。
逆にバランスを壊す行動もあります。ゲームでは、情報を共有しない、隠すなども行動をとると、周囲から情報が見えなくなり、バランスが取れなくなってしまいます。また、自分の成果を追求して周囲の成果を下げる行動をとる人が多いと、それを取り返すためにバランスが壊れてしまいました。
5.組織市民行動をどう考えれば良いのか
組織市民行動は時間がない中で行うと、成果が下がってしまいます。
また、定義からしても公式に評価される行動ではありません。
では、組織市民行動をとるメリットとは一体どのようなものでしょうか。
評価というのは、実は公式なものだけではないと私は考えています。非公式な評価とは、成果と期待の差分といってよいと思います。
組織市民行動は、公式の評価制度に定められていない行動でした。期待していないけど、組織市民行動が取られると、それが後々に認められることがあります。簡単にいうと、「好かれる(かわいがられる)」のです。
例えば、好かれているひとはいざというときに助けてもらえるなど、会社の中に非公式に存在する相互扶助の仕組みに入ることができます。ある意味で「信用の貯蓄」を作る活動が組織市民行動です。
組織市民行動は、直接的には役に立たないし、成果にもつながらないように見えますが、相互扶助に組み込まれれば助けられることもあります。また、会社の成果があがれば、巡り巡って自分に返ってきます。
そんなことを考えながら、意識的・無意識的に組織市民行動をとってみる。そんなことをしていけば、職場で早期に認められるのかなぁということを考えます。
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公開日: 2012年9月6日