私は欧州に在住していたことがあります。このためか分かりませんが、年に数回、自分の収入がユーロベースでいくらかということを計算する習慣があります。すると、面白いことに、日本円ベースでは着実に増えているにも関わらず、毎年ユーロベースでの給与は下がっていたりします。
たまに外国の友人から、「今年収いくらなの?」と聞かれます。私はそのあたりを答えることに抵抗のない性格ですので、「○○円だよ」と答えます。すると、「○○円てユーロでいうといくら?」と大概聞かれますので、答えると、「昨年から何%増えたの?」 と突っ込まれます。これに対して、「日本円だと○%増えたけど、ユーロだと○%減った」ということを答えます。空気の読める友人はそれ以上突っ込んでこないですが、微妙な空気が漂います。
また、中国の友人がいるのですが、中国では物価上昇率が3%もあったりすることがあります。もし年収200万円だとしたら翌年206万円にならないと実質上の減給かつその一年間の自分の成果が全く反映されていないということなので、正しく評価させる会社に転職するということを考えるようです。
日本の友人にこの話をしたところ、かなり理解に時間がかかりました。恐らく一般的な若い日本人の思考の枠組みに、物価は上昇するけれど、そこまで大きく変化することはないというのがあるのかもしれません。
ゆでがえる的にじわじわと購買力が下がっていることに無意識でいることに対して、たまに怖くなる時があります。
話は変わりますが、売上高成長率という財務における会社の成長性を示す指標があります。
大抵の業界では、売上高成長率は数パーセントなので、二桁成長だとすごい成長企業のように見えたりします。
しかし、売上高成長率が高くても、それが市場の成長率や物価の上昇率を下回っていたら、実質的な売上高が減少しているということになるので、注意が必要です。
急成長している業界で、二桁成長ということを言ってくる会社があったら、「御社の業界の成長率はどの程度なのですか」と聞いてみるといいかもしれません。
自社の業界の成長率という思考の枠組みに捉えられていると、その成長率の価値を見誤るかもしれません。例えば私の身近な研修業界で例をあげると、研修業界はこの5年で市場が倍になっているようですので、年間の売上高の成長が15%位あると、標準的なレベルの会社といえるのではないかと思います。(プレイヤーの数も増えているので、一概にそうとは言えないかもしれませんが。)
ともかく、”相手の立場での一般的な変化”、”何かと相対化したときの成長率”を考えてみると、意外な気付きがあったりするかもしれません。
公開日: 2008年8月30日