研修の営業をしていると、「講師で決める、講師に会わないと決められない」というお客さまがいらっしゃいます。
研修の構成要素として講師は非常に重要です。徒手空拳で研修を行うのであれば間違いなく講師の属人的能力に研修の結果はほぼ100%依存するでしょう。
このため、「講師がどんな人か、経験が豊富か」 ということに意識が集中するのもすごく良くわかります。
そもそもなぜ「講師はどんな人か、経験が豊富か」に意識が集中するのでしょうか?
いくつかあると思いますが、
- 研修がうまくいかなかったときに原因を「講師」と考え、講師を良ければ成功すると考えてしまう
- 研修の成功要因と講師を結びつけるバイアス(実は講師以外にも要因はあるが、注目しない)
などが背景にあるのではないでしょうか。(実は1と2は同じことをいっています。)
驚かれる方もいると思いますが、実は研修の失敗・成功に講師の影響はさほど大きくありません。研修の構成要素は、講師以外にも、コンテンツや研修デザインなど複数の要素があります。当たり前ですが、講師はコンテンツに基づいて講義をするのです。講師の属人的コンテンツが存在することも多いので、同一化してしまうこともあるでしょう。
弊社では研修が「成功」するのには、2つの理由があると思っています。
- 研修設計を行う側の課題整理・解決策立案スキルの弱さ(講師やコンテンツ選定の前工程)
- コンテンツの質
これはつまり、どういうことかというと、研修の「要件定義」をきちんとして、それに対して適切なコンテンツを使用していれば研修は成功するということです。逆にいうと、要件定義がしっかりしていて、コンテンツがしっかりしていれば、講師には力量はさほど求められないということです。(もちろん、最低限のレベルは必要ですし、講師さんには失礼な話かもしれませんが。)
弊社では、要件定義をしっかりし、コンテンツをきちんと作り込んでいるので、営業レベルで「講師と合わないと決めない」と言われたことはほとんどなく、「これなら大丈夫」というお話を頂いております。
少し話は変わりますが、研修業界では、コンテンツをきちんと作り込んでいるといわれている会社が数社あります。それらの会社は他社と比べ、研修料金が高い傾向があります(開発費が乗っているので、高くなります。)。反面、契約している講師にはらっているお金は他社が講師にはらうお金よりも少ないようです。(つまり粗利が高いということですね。)
逆に、営業活動ではじめから講師同行したりするなど、講師の魅力で受注しようとする会社は、少し危険です。「コンテンツがしっかりしていない」ということを意味していることが多いからです。これは、企業側の講師選定眼がかなり問われます。商談の席ではよくても、研修の場で同じ成果が創出できるかは見抜けません。また、研修は毎年継続して行っていくものですので、その講師の属人性リスクを抱えることになるのです。
「研修会社の見分け方」のような話になってしまいましたが、 結局「要件定義」と「コンテンツ」で研修結果の大半は決まるということと、講師依存の研修選定をした場合、当たり外れのリスクを全て負っているということ、また翌年講師に不測の事態があったりした場合(実はかなりよくあります。研修会社と契約講師の間のトラブルで、その講師が使えないとか・・・)、研修の質の継続性は担保できないのではないでしょうか。
弊社は、すこし変わっているかもしれませんが、安定的に70点の研修ができることを目指しています。このために、かなりの期間をかけてコンテンツ製作を行う方針です。講師依存の研修は、0点~100点で幅があるのに対し、リスク管理がきちんとできるというのをウリにしています。「70点」というところにお客さまがどの程度価値を感じてくれるのかが、弊社の今後を占うように思います。この70点に、社内講師の方が付加価値をつけて、100点をもらえるようになってくれれば、非常に嬉しいなぁと思います。
公開日: 2008年5月22日