こんにちは、インターンの小川功毅です。
前回は「発達の最近接領域」(ZPD)を紹介しましたが、
今回は、その基となる「構成主義」「社会的構成主義」「構築主義」の概念を取り上げたいと思います。
これらの観点から学習を捉えなおし、その意義における研修の妥当性を考察していきます。
「構成主義」とは?
学びとは、学習者が自ら知識をつくることである
まず、「構成主義」「社会的構成主義」「構築主義」を語る上で、この中心にあるピアジェによる「構成主義」(constructivism)に触れておく必要があります。
結論からいうと、この「構成主義」の提示する学習観とは、人が学ぶということは学習者が自ら知識をつくることである、というものです。
知識は付与されるものではない
学びというと、一般的には何かの知識や情報を知ったり、何かを教わったりする場面が想像されると思います。
そのとき、教育者から学習者に知識が付与されたときに学びが起こるのではありません。
「構成主義」によると、知識というのは客体として存在するのではなく、学習者が構成するものです。すなわち、学習者が自分の言葉で理解したり、腑に落ちたと感じられたり、自分一人で実践できるようになったりするときに、学びが起きるのです。
「社会的構成主義」とは?
社会的相互作用を通じて知識は構成されている
この知識の構成が、社会的な関係性における相互作用によって起こるとする立場がヴィゴツキーによる「社会的構成主義」(social constructivism)になります。
「構成主義」では知識の私的構成に重点が置かれていたのですが、「社会的構成主義」では知識が共同で構成されるということを重点に置いて論じているのです。
知識は他者に学び、協働に用いる
というのも、全く自分一人で完結する物事であれば私的に学ぶことができるのですが、特に仕事においては一人で完結するような物事は多くはなく、他者との協働によって成り立っています。そのため、他者との関係性の中で学び、実践することが求められます。
また、知識に関しても、一切ゼロから自分でつくるのではなく、既存の体系化された知識であったり、先輩から学び取ったりするものです。
だからこそ、自分一人で学ぶのではなく、他者から学び取ったり、他者と協働する中で学んだりすることが必要なのです。
このことは、前回のコラム「できないことをできるようにしたい!「発達の最近接領域」を活かした研修・学習とは?」でも触れており、ここでも自分の学習を手助けしてくれる協力者の存在が推奨されています。
「構築主義」とは?
物を作る(実際につくってみる)ことによって知識が構成される
さらに、これらの「構成主義/社会的構成主義」に関連する概念として、パパートによる「構築主義」(constructionism)があります。
「構成主義/社会的構成主義」とは、知識は客体として存在し付与されるのではなく、知識は人/人々において構成されつくられるものだ、とする立場でした。
ここで「構築主義」では、何か物を作ることが知識を構成する上で重要であることを説きます。
例えば、料理のレシピを読むよりも試しに一回作ってみた方が理解できたり、頭の中で漢字を覚えるよりも書いた方が覚えやすかったり、舞台のセリフをひたすらみんなで考えるのではなく実際に演技をする中で形作っていったりすることが挙げられます。
これらの学習観から考える、効果的な研修の在り方とは?
構成主義:体験型研修は知識を自分ごと化させる
「構成主義」の学びに直結する研修として、体験型研修が挙げられます。体験することを通じて、学習者が主体となって知識を体得したり、実際にやってみて実践する中で知識を身に付けたりします。
そのため、講義によってただ知識を知るのではなく、体験することによって学習者は知識を自分ごと化し、実践しながら身に付けていくことができるのです。
だからこそ、効果的な研修のためには、学習者が実際に体験する時間を設けることが大切です。
社会的構成主義①:グループ内で学びあうことができる
さらに、体験型研修を個人ではなくグループで行うことによって、「社会的構成主義」の学びが起こります。
ただ自分一人で知識を習得しようとしても何から手を付けて良いかわからなかったり、どうしても一人ではできなかったりしてしまうため、協力したりお互いに学びあったりしながら学んでいくのです。
社会的構成主義②:複数人でのロールプレイによって活きた知を身に付ける
加えて、複数人でロールプレイを行うことで、実際の職場を再現しながら学習を行うことができます。
特にコミュニケーションスキルや姿勢・態度の醸成は、実践のための知識であり、実践によって学習することが重要です。
さきほどの舞台のセリフの例のように、複数人でのロールプレイによって学ぶことで、実際の職場の中でもすぐに実践できる活きた知識であると言えるのです。
構築主義①:目に見える反応が構成の助けになる
そして、体験型研修において、ボードゲームやカードを用いることで「構築主義」の学びに貢献します。
ボードゲームやカードの駒や点数などによって、目に見える形で自分の行った行為に対する反応が返ってきます。
この反応が、自分の実践を修正する助けになってくれたり、自分の中での正解を導くヒントになってくれたりするのです。
だからこそ、学習者が体験する際には、それを評価しうるフィードバックを返すことが効果的だと言えるでしょう。
構築主義②:実践に必要な知識は、実践によって学ぶ
また、実際にやってみて、ゲームの中で体現することによって、実践において必要な知識を体得することができます。
さきほどの料理や漢字の例に見るように、実践的な知識は、実際にやってみることで、より効果的に身につけることができるのです。
まとめ
これまで、構成主義、社会的構成主義、構築主義をまとめながら、これらの学習観における研修の在り方を考えていきました。
研修を開発する際には、
構成主義的に、学習者が体験を通じて知識を自分ごと化してもらうことが
社会的構成主義的に、職場を想定して複数人で学びあうことが
構築主義的に、実際に物を使って実践を支援することが
それぞれ重要であると言えそうです。
私自身もコラムを構築することを通じて、自らの“構成主義の知識”を構成し、皆さまに対して社会的にも構成することができました!笑
お読みいただいた皆さまの研修開発や学びにとって有意義なものになれば幸いです。
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カテゴリー: メンバーコラム
公開日: 2020年3月19日