ザ・フレームワーカーの実演会を行ったところ、講師をする方々からもう少しフレームワークの委細を教えてほしいという声があった。本コラムは、ある程度のフレームワークの知識がないと言葉が難しいかもしれないが、まさにフレームワーカーが扱っているのはこうしたメタ言語的な会話についてこられるようにすることなので、拙い文章ではあるが読み解いていただきたい。
デザイナーズノートに記載した通り、フレームワークにはともすると原理主義的な「お作法」があるようにも感じるところがあるが、それらを恐れず、「高橋はこのように理解している」であれば角は立つまいということで、「ザ・フレームワーカー」に登場するもののうち、やや難易度が高いフレームワークについて私の理解を記載する。
フレームワークとフレームワークの間をストーリーでつなぐ
今回、私が書きたいのは、フレームワークとフレームワークの間の「ストーリー」である。このストーリーを捉えることでフレームワークは生きたものになり、大きな絵図が描けると思う。今回は、即興でフレームワークをつなげて文章にし、20分で書いた駄文であるが、一つの捉え方としては講師の皆様には有益だと思う。研修目的に合わせてフレームワークを説明する際のストーリーのつなぎ方として参考にしてほしい。このやり方自体がある種のワークなのである。なお、フレームワークと考えるものは太字にしておく。
まず、経営を考える上で最上位に来るのは戦略である。私の理解では戦略を構成するのは、広義のマーケティングと広義のファイナンスである。「ザ・フレームワーカー」では、ファイナンスに関するフレームワークは入っていない(なぜ入っていないかはお察しください)。このため、ここでは大半を戦略フレームワークとマーケティングフレームワークに紙面を割く。
まず、戦略とはMVVから始まる。経営理念のフレームワークである会社の存在意義・将来像・それを遂行する上で全社的に理解して置くべき価値観のことだ。このMVVに基づいてどのように会社を経営していくかが戦略である。「マーケティングは経営そのもの」という考え方がある通り、戦略の半身はマーケティングである。
マーケティングの側面からストーリーを書く
マーケティングでは内外のフレームワークでものを見る。その際に外、つまり外部環境から経営を巨視的に理解するためのフレームワークがPESTである。最近は、PESTELを使うこともあるが、PESTで十分だろう。そして、次は内外の橋渡しとなる競争環境を見る。これが3Cや5forces/5Fである。3Cは比較的固定的な競争環境、5forces/5Fは新規参入や代替品も登場する流動的な競争環境を想定したフレームワークだ。ちなみに、固定と流動もフレームワークの一つである。
そして、競争環境の中にそっと入っている「顧客/市場」をより明確にすることでマーケティングらしいと多くの方が感じる活動が始まる。ここで顧客をSTPを使って特定するのである。つまり、市場を網で切り、その中のどこをターゲット顧客とするのかを定めるのだ。そうして、自社を競争環境の中でどのポジションに位置づけるかが決まる。
微視的な観点で企業活動を書く
ここからが個別企業の話になり、企業の側から微視的に世界を見る。文脈もあるので、まずはマーケティングの文脈を継続しよう。次はマーケティングの4Pによるマーケティングミックスである。上述のポジションを取るにあたって、自社はどのような製品をどんな価格にし、どのようにコミュニケーション(プロモーションを読み替えている)をとり、どんなチャネルで提供していくのかを考える。4Pではなく4Cを使いたがる人もいるが、4Cは用語の難易度が高くて可用性が低いので、「ザ・フレームワーカー」には入れていない。また、プロモーションに絞ると、もう一歩先にプロモーションミックスがあり、プロダクトに絞るとプロダクトミックスがあるが、これも割愛した。
実行レベルで登場するフレームワーク
このようにして顧客/市場に届けるものが決まり、自社の立ち位置が定めるまでが、計画のフェーズである。ここから後は、PDCAやPDSを回していきながら、局所ではOODAで戦術レベルの小さいサイクルを回す必要がある。こうしたサイクルを回す基盤となるのが経営資源(3M)だ。ヒト・モノ・カネを基盤にして企業は活動を行う。
ただ、やりたいと決めたからといってうまくいくとは限らない。4Pを使って立ち位置を定めた後にそれに合致するサービスの立ち上げを行わなければならない場面もあるだろう。そうした際にはSCAMPERなどの発想技法でアイデアを出し、そのアイデアを、事業・アイデア評価のフレームワークで評価する。特に「実現性」については自社分析の手法であるVRIOが有効だ。意見が割れたらプロコン分析を行えば良い。
事業を俯瞰するフレームワーク
こうして事業を始めるが、事業活動は必ずしもうまくいくとは限らない。事業活動はプロダクトライフサイクル(PLC)に沿って進む。製品を主体として考えると、プロダクトライフサイクルだが、逆に顧客主体で考えればイノベーター理論とある程度符号する。導入期の商品を購買するのは革新者や初期採用者なのはいうまでもないだろう。また、導入期の期間をできるだけ短くするために期間という考え方も重要だ。こうして数々の事業を始めると、うまくいくものもそうでないものもでてくる。こうした際にPPMで分類していくこともでてくるだろう。
PDCAを回す中では、3ムをなくし、5Sを徹底することも求められる。更に、何らかの結果が出た後は、KPTの観点で組織の上から下までが活動を振り返る必要がでてくる。そうしているといつか戦略を実行する上で組織が機能不全になることもでてくるだろう。そうした際には7Sで問題の所在を明らかにすればよい。
こうしたことを過去・現在・未来の時間軸において常に考え続けていくことが経営であり、それを簡便に語れるのがフレームワークなのである。
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公開日: 2018年12月22日