省察(リフレクション)の定義
研修で「リフレクション」を促すと、「ここが悪かった・・・」という反省に終始したり、反省は自己の失敗や自己批判を含むため「書きにくい」とアウトプットができなかったりしませんか?
もしくは、過去の現象に焦点をあて、「○○ということがあったんだけど、○○すれば良かった」という回顧的振り返りが行なわれたりしませんか?
もしくは、「私は・・・」で始まる「自分」に限定した振り返りが行なわれたりしないでしょうか。
この数年、リフレクションという言葉が流行っていて、内省と訳されていますが、どうも内省が適切な訳語ではないような気がして、色々と文献を渉猟していました。
昨年発売されたジャック・メジローの「おとなの学びと変容―変容的学習とは何か」を読んで、納得のいく言葉の差異を理解できたので、共有させていただきたいと思います。
ジャックメジローは、成人教育三大巨匠のひとりと言われているらしいですが、翻訳書があまりでていないので、日本では有名とはいえない認知度のように思います。本書も専門書で購入に苦労しました。
本書では、リフレクションを「省察」と訳し、その理由を訳者は以下のように説明しています。
リフレクションには、省察の他、反省、振り返り、内省などの訳語が当てられることが多い。反省では過去への志向と批判性が強くでてしまいかねない、振り返りでは過去を顧みることが強調され、過去への志向性が残る。内省では、自分の内面を見つめることのみが重視されかねない。
また、ジャックメジローは、リフレクションを以下のように定義しています。(難しいですが。)
省察(リフレクション)とは、経験の意味づけを解釈し、意味づけを行う努力の内容とプロセスを、また努力の想定を批判的に評価するプロセスである。
省察は、目的に対して役立つものであり、そして目的は、活動にまとまりと秩序を与える体制化の原理として役にたつ。省察の性質は、学習者の目的が、課題試行的な問題解決を行なうことなのか、ほかの人々が意味する内容を理解することなのか、それとも自分自身を理解することなのかによって、明らかに異なるものとなる。
以上の部分がもっとも大きな省察の特徴ではないでしょうか。内省のように内向きに限定するではなく、問題解決や他者・自己の理解を含むやや広い概念と私は理解しました。
まだ、省察と内省がぼんやりしているので、少し読み進めたら、以下のような記載がありました。
内省(introspectation)という用語が、私達がある一定の方法て知覚し、考え、ものを感じ、あるいは行為するという事実に気づくことだけを指しているなら、省察は内省と同じではない。
内省には内省で対応する英語があるんですね。これらの違いを踏まて、研修で「リフレクション」を行なうときに説明してあげれば、より実施者が求めているようなアウトプットがでやすいように感じます。
特に、外向きの「課題試行的な問題解決」の部分は目が向かないことが多いので、強めに解説すると良いかもしれませんね。
私たちは、ビジネスゲームという振り返りが重要なサービスを提供しているので、こうしたことも日ごろから調べています。ご興味ありましたら是非ブレストできたらと思います。
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公開日: 2013年8月5日