日経新聞2024年4月8日の記事「研修ブームに税務リスク」を読みました。
このところ、研修は急激に増えている印象があります。人的資本経営の文脈もありますが、研修を後押しする賃上げ関連の助成金の影響が大きいように思います。
本記事では、翌年度に実施する研修を「前倒し契約」することを企業が研修事業者に持ちかける動きが広がっているとのことでした。
例えば、4月から新しい期が始まり、その期に研修を実施する会社が、前期である3月中に前倒し契約をする場合で考えてみましょう。別に前倒し契約を持ちかけることもそれを受ける研修会社もいずれも問題はありません。そして、契約のみならず請求書発行することも何ら問題はありません。私たちのサービスではモノを納品しますので、納品時にご請求を行います。3月に納品して4月に実施というのはよくあることです。
問題になるのは、費用/損金にすることです。契約や納品、出金があることと費用は全く関係がありません。つまり、お客さん側では、3月に納品されたからといって、3月の費用にしてはいけないんですね。逆に4月に研修を実施するからといって4月に納品とする必要もありません。納品されることと費用計上することはイコールではありません。3月に納品されたモノがあれば例えば「貯蔵品」のような形で資産計上しておいて、実施した月に費用に振り替える処理を行います。
ただ、これまでやり取りを長年繰り返した結果として、研修関連の出費は「全て費用」という認識の方が多いのが実際です。私たちは「経理に確認してください」とお伝えします。その後、経理から説明を受けると納得いただけるようです。
これをきちんとやっておかないと、経費の過大計上による所得の圧縮とみなされ、追徴課税のリスクがあります。
ただ、今は2024年税制改正大綱では、賃上げ税制の対象として、企業規模に応じた賃上げ率に応じて、税額控除があり、そこに更に教育訓練を重ねることで大企業であれば5%、中小企業であれば10%の税額控除があります。これが費用にすることのインセンティブになっているようにも思います。
研修系サービスは等量・等質のサービスとして認められにくいので、前払費用にするのが難しいところがあります。対策として、以前の例ですと、とある外資系企業から「企画料」と「実施料」で分けることを求められたりしたことがあります。
また、これまで打診はありませんでしたが、企画会議の定例化という方法で等量・等質のサービスを実現するというのがあるそうです。私たちのお客さんの中にも、毎月打ち合わせをしているクライアントはあるので、そうした場合には、「顧問料」的な形で等量・等質化するというのは出てくるのかもしれません。
色々と動きがあって楽しいと感じます。
関連リンク
公開日: 2025年2月27日