今回は、前回の同意と合意の問題と、次回のコラムをつなぐ内容として書きました。次回は、シェアードリーダーシップについて書きますが、今回書く「haggle」についてわかっていると少しわかりやすくなるのかなと思います。(かなりマニアックな内容ですが、研修にゲームを使いたい人であれば、絶対に抑えておいた方がよいものです。)
定型のない知る人ぞ知る交渉ゲーム
ゲームを用いた研修を始めたころ、知ったゲームがあります。ハグルというゲームです。このゲームは、シド・サクソンという有名ゲームデザイナーによるもので、当時はネットでしか探せませんでしたが、たまたま「A gamut of games」という洋書を手に入れました。(のちに、和訳された「シド・サクソンのゲーム大全」が発売され、その一つとして紹介されたことで少し認知度があがりました)当時は知る人ぞ知るゲームでした。というのも、そのゲームは、例えばボードゲームのように箱に入って売っていたりということがないのです。そして、基本となるルールがあるのみで定型がありません。
基本ルール以外は自分で作る
なので、基本となるルールをもとに、ゲームを仕切る人(ゲームマスターと呼ぶことがあります。)が中身を作って、それに従って、ゲームが行われます。ゲームのテーマは何であっても構いません。ハグル(haggle)という英単語が示す通り、交渉のゲームですからビジネスであれば、商社などの交渉のありそうな業態がよいのではないかと思います。
情報が分散され、ゲーム中にルールを理解していくのでルール説明がない
ハグルでは、情報が分散されます。参加者にはゲーム開始時点ではほとんど情報がありません。その点で、開始時点ではほとんど何をしてよいかわからないといえるでしょう。そうした中で参加者はカードを交換するなどし、情報や資源を集めていきます。資源にも情報にも価値がありますが、その価値は、自分が持っている情報によって異なります。
交渉して、点数が高くなりそうな資源を集める
このゲームは、基本的には交渉を介した「セットコレクション」のゲームです。セットコレクションとは何でしょうか。簡単にいうと、ポーカーのようにペアを持っている、ストレートであるといったセットを集める(コレクト)ことで点数が決まるようなものです。
例えば、Aさんは資源Xが3つ集まると知っているので、資源Xを集めたいが、Bさんは資源Xには価値がないと思っているので、自分にとって価値が高い資源Yを手に入れるために資源Xを手放してもよいと考えているが、Aさんが資源Xを欲しがるということは、資源Xの価値が高いのかもしれない。そして、それははたまたブラフ(はったり)で本当は資源Yを手に入れたいが、資源Xに価値があると周囲に思わせることで資源Yを安く手に入れようとしているのではないか・・・
そんなことをしながらプレイヤー間で交渉を行っていくのです。具体的には、資源Xが欲しいなら資源Y2枚と交換するよ、もしくは●円と交換するよ、といった形で交渉をしていくわけです。
似た仕組みを持つゲーム
この手の交渉を伴うゲームは比較的多く、超有名なところでは「カタン」があります。また、2010年に私が登壇した日本コーディネーター協会のイベントでは「Basari」というゲームを使いました。
時間で区切り、最後に全体像が分かるので、研修向き
交渉のゲームは長時間化しがちという欠点がありますが、ハグルは大人数が推奨されたゲームで、かつ時間になったら終了になるので、時間の制約がある研修に向いた仕組みのゲームです。
ゲームの終わりに、その日のルールの全体像が明かされます。例えば、Xは3枚だと100万円になるが、さらにYとZがあれば追加で50万円、Zは3枚持っていると-20万円といった形です。(ゲーム中は、全員がこの情報を分散して保有しています。)
現実の世界では、情報は基本的に非対称です。各社が同じ情報をもつ、情報の対称性はほぼないといってもよいでしょう。その点で、haggleは現実とも類似性のあるゲームだといえます。
ちなみに、こうした仕組みであれば、ネタバレしそうだと感じることもあるかもしれませんが、ルールとなるカードを大量に作っておいて、そこから選ぶ形にするとそうした問題は解消されます。
ハグルを参考にした私もしくは当社の取り組み
私自身はハグルを体験したことがないのですが、当社では、過去にハグルを参考にしたゲーム開発を何度か行っております。
1つは、結婚式二次会ゲームです。
私は、以前、友人の結婚式の二次会向けに、ハグルに謎解きゲーム的な要素を加えてゲームを作りました。
また、それを翻案し、ビジネス向けのゲームとして、某金融様向けにゲーム開発を行い、それをパッケージ化して「Go Agile!」というゲームも開発したことがあります。
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これまで、haggleについては詳しく書いたことがありませんでしたので、有名なゲームの一つとしてご紹介しました。実態のないゲームなので、市販されておらず、作るのにもそれなりに手間がかかるものなので、企業研修向けのところがあるのではないかと思っています。
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公開日: 2021年7月14日